仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
優莉の実家は沖縄、明日美は実家暮らしだ。大学時代に仲の良かった友人は、地元へUターン就職をしてしまった。
力なく首を横に振る。頼るあてはどこにもない。困り果てて体から力が抜けていく。
「俺のところに来るか」
俺のところって……? なにを言ってるの?
疑問形ではなく断定的な言い方に戸惑う。
「あの、もう一度言っていただけますか?」
「だから、俺のマンションにくるかって。ほかにどこもないならそれしかないだろう」
「いえいえ、そういうわけにはいきません」
いくらなんでも勤め先の社長のマンションに泊めてもらうなんてできない。
「今夜はホテルにでも」
そこまで言ってから、がさがさとバッグを漁って財布を取り出す。中身を確認してみると、千円札が一枚、二枚、三枚……それしかない。あとは小銭がわずかにあるだけ。
これではビジネスホテルでも泊まれないだろう。
事情があって普段から慎ましく生活している優莉は、クレジットカードも持ち合わせておらず現金だけが頼みの綱なのだ。