仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

「漫喫なら――」


そう言いかけた優莉の腕をむんずと掴み「いいから行くぞ」と隼は歩きだした。


「えっ、しゃ、社長、待ってくださいっ」
「三千円でどこに行くって言うんだよ」


財布の中身をばっちり見られていたようだ。あまりにも寂しい懐事情を見られて恥ずかしくなる。せめて一万円、いや五千円あれば格好がついたのにと悔やんでならない。三千円では子供の小遣いだ。


「でもっ、あそこを離れちゃって大丈夫でしょうか。住人と連絡がつかなくて困るかも」
「今夜は消火のゴタゴタでそれどころじゃないだろう。明日の朝一番にアパートの管理会社に連絡を入れればいい」
「そう、ですか。でも――」
「まだなにかあるのか」


ズンズン歩きながら隼がチラッと優莉を振り返る。


「本当にいいんですか?」
「キミが公園で野宿でもして凍死したら夢見が悪い」

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