仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
そうまで言ってもらったら甘える以外にないだろう。少ない持参金でみじめな優莉にはありがたい話だ。
「……すみません、お世話になります」
優莉がしょぼんと頭を下げると、隼が立ち止まった。
「乗って」
昨日も乗った隼の車が歩道に停車していた。ここから現場まで歩いたらしい。
エンジンがかけられ、野次馬の人たちを避けながらゆっくりと発車する。
「社長はどうしてここに?」
「仕事帰りに通ったら騒ぎに遭遇してね。キミのアパートの近くだったからまさかと思って」
「ありがとうございます」
わざわざ車を降りてまで確認してくれるなんて。ただ、今夜はいいとしても、明日からどうしよう……。
残っているものは優莉の体ひとつとバッグに入っているものだけ。アパートの部屋にはもともと大した荷物はないが、下着も洋服もすべて灰となって消えてしまった。