仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
これまで以上に長い時間、ドラムロールが鳴り響く。「引っ張り過ぎ!」と場内からツッコミが入るほど引き延ばした後ようやくぴたりとやみ、司会者が声高らかに発表した。
「百二十四番! 百二十四番です!」
会場内が一気にどよめき、誰なのかと隣近所とカードを見比べる。「あぁ、違う……」と方々から残念がる声があがるが、なぜか名乗り出る者はいない。
「百二十四番さん、いらっしゃいませんか?」
スポットライトが出席者たちの顔を照らしては円を描くように移動していく。司会者が首を伸ばして会場内を見回すものの、それでも誰ひとりとして手をあげない。
もしかしたらひと足先に帰ってしまったのではないか。優莉と同じように抽選会には興味がなく、当たらないだろうと考えた可能性もあるだろう。
「ねぇ、まさか優莉じゃないよね?」
食べ続ける優莉のワンピースを明日美が引っ張った。
「えぇ? まさかぁ」