仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「わ、私も寝ます!」
負けずに反対側に回り、勢いに任せて優莉もシーツと毛布の間に体を滑り込ませた。
ひやりとした感触は最初だけ。すぐに全身があたたかくなっていく。ほどよいスプリングは寝心地がとてもいいが、暗闇に包まれたせいか火事ですべてを失ったのだと思い出す。明日からいったいどうしたらいいのか。
……すべて?
なにかが心に引っ掛かった次の瞬間、とても大切なことを思い出した。
「やだ! どうしよう!」
がばっと起き上がる。
「なんの騒ぎだ」
隼も片方の肘を突いて上体を少し起こした。
「大変なんです」
「なにが」
「チンアナゴが」
「……チンアナゴ?」
隼は眉根を寄せて首を捻った。