仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
せめてもの反撃だった。
ところが不満そうに「悪かったな、十二歳も年上で」と言い返してきた割には、軽くあしらって終わり。全然堪えていない様子だった。
それもそのはず。お子様の優莉に言われても痛くもかゆくもないだろう。
「悪いが朝食は食べない主義なんだ」
ダイニングテーブルにコーヒーカップを置き、隼は腰を下ろした。
顔を洗ってからにしようとパウダールームを借りると、本当にひどい髪の毛だった。隼の言っていた通りぐちゃぐちゃだ。どう寝たらそうなるのかと自分に問いたい。
水で髪を濡らして借りたドライヤーでブローをし、なんとか見られるように整えてからダイニングへ戻った。
隼の向かいに置かれたコーヒーの前に座り、「いただきます」と口をつける。ブラックは苦いが、わがままを言って砂糖をもらえる立場ではない。
「今日は仕事を休むんだろう?」
当然のように聞かれ、首を横に振った。
「急に休んだら迷惑をかけてしまいます」
「火事で家を焼け出されたのに、それどころじゃないだろう」