仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


手をひらひらと振って笑顔を作る。
個人の家庭の事情なのだから知らなくて当然だ。まさか優莉が妹の学費を払っているからお金がないなんて、誰も思わないだろう。仲良くしている明日美にだって話していない。


「ここにいろ」


隼が真顔でとんでもないことを言いだした。


「……え? ここって」
「だからここだ。俺のマンション」


人差し指を下に二度向けて〝ここ〟と場所を強調する。
隼のマンションに住めというのか。


「いえいえいえ! そんなわけにはいかないです」
「お金がなければ、ほかに手立てがないだろう。生活を立て直す資金ができるまでここにいたらいい。ひどいことを言ったお詫びだ」
「でもそんな迷惑を社長におかけするなんてできません」


ひと晩泊めてもらっただけでも大変な事態なのに資金ができるまでなどといったら、それこそ何ヶ月かかるのか。優莉には想像もつかない。

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