仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
隼の頼もしいひと言が優莉の背中をそっと押す。とても優しい顔だったため、心臓が誤作動を起こしてきゅううんなんて音を立てた。
「ありがとうございます! どうぞよろしくお願いいたします!」
立ち上がって頭を深く下げる。本当に感謝しか言葉がない。
「まずは店に欠勤の連絡をして、それからアパートの管理会社に電話をした方がいい。俺も詳しくは知らないが、火災保険に入っているだろうからその保険金で少しは補填してくれるかもしれない」
「はい」
「それから……」
隼はポケットから黒い長財布を取り出した。
なにをするのかと立ったまま見ていると、隼はそこから一万円札を何枚か抜いてテーブルに置き優莉の方に滑らせる。
「あの、それは……?」
「これで必要なものを買っておいで。洋服だとか化粧品とか」
「でもいただくわけには」
あまりにも恐れ多くて、テーブルから一歩退く。