強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

「おお、八雲くん! よく来てくれた、待っていたよ。さあ、そこに座りなさい」
 
興奮気味の父は八雲さんをリビングに招き入れ、自分も大きなソファにドカッと腰を下ろす。私はどこに座ればと八雲さんに視線を向ける。隣でいいと目から伝わり、素直にそれに従った。
 
今日の八雲さんは、紺色のポロシャツにベージュのパンツを合わせた大人のラフスタイル。

父は普段着でいいと言ったらしいが、パイル生地を使ったイタリアンカラーの七分袖のジャケットを羽織ってカジュアルなスタイルを格上げするところは、さすが副社長と言う他ない。
 
一方、私はというと。フレアな袖口とウエストのリボンがお気に入りの、フラワープリントが大人フェミニンなワンピース。あまり着慣れない装いだけれど、“我慢するのも、可愛いのための努力”と会社にあった雑誌に書いてあるのを見て、ちょっと背伸びしてみた。
 
可愛いのための努力と言っても、別に八雲さんのためじゃない。あくまでも自分のため。そう、自分自身のため……。
 
なんてひとりで考えてるうちに母が現れ、父の隣に座る。


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