強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「八雲くんの気持ちはよくわかった。そこまで芳奈のことを思っていてくれているとは……。いいだろう、芳奈を君に託す。幸せにしてやってくれ」

「ありがとうございます。ダメだと反対されることも想定はしていたのですが、お許しをいただけてホッとしています。芳奈、良かったね」
 
両親の前だと言うのに、八雲さんが私の肩を抱き寄せた。まるで本当の恋人になったようで、心がふわふわ舞い上がる。

──って、違うでしょ! 今日はあくまでも八雲さんと会わせることが目的で、なんで結婚まで話が進んじゃうの? 

八雲さんも八雲さんだ。結婚の話は軽く流してくれればよかったのに、近い未来の結婚をお許しいただきたくとかなんとか言って、どうしちゃったの?
 
これは違った意味で失敗だと、がっくり肩を落とす。でも何故か父と八雲さんは意気投合しているようで、話がおかしな方へと進み出す。

「八雲くん、物は相談なんだが。今ここで、これに署名をするのはどうだろうか」
 
そう言って父がテーブルの上に置いたのは、どこからどう見ても婚姻届で。いつの間に用意したのか証人の欄にはご丁寧に、父と母の名前と押印がされている。


< 103 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop