強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
でもまさか八雲さんが婚姻届に名前を書くなんてこと、間違ってもないよね?
 
そう高をくくっていた私の目の前で、ボールペンを手にした。

「いいですね、お義父さん。僕は全然構いません。芳奈もいいよね?」
 
ぼ、僕なんて八雲さん、あなたは一体誰ですか? 

いつもと一人称が違うと思うんですけど。芳奈もいいね?って、それ全然よくないです。

もしこのまま役所に出されてしまえば私たちは正式な夫婦になってしまうのに、八雲さんはそれでいいの?

「八雲さん。そこまでする必要はないと思うんですけど」
 
彼の耳に顔を寄せ、小さな声でささやく。

今日のこの小芝居は一時のこと。しばらくすれば私と八雲さんは、副社長と一社員に戻る。だから婚姻届にサインだなんて、まかり間違えば一大事。取り返しのつかないことになる。
 
でも八雲さんから返ってきた言葉は……。

「ごちゃごちゃ言ってると、今ここで嘘をついてることをバラす」

と脅迫まがいのもの。


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