強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
嫌な予感が──。

「芳奈、何も心配することはない。同棲、大歓迎だ。お義父さんも僕と芳奈さんが一緒に暮らすこと、同意してくださいますよね?」

「ああ、もちろんだ。何を隠そう私も、母さんと同棲してから一緒になったからな」

「そうでしたね、あなた」
 
ふたり向き合って手を握る父と母を見て、これはもう何を言っても無駄、お手上げだと観念する。

誰のせいでこうなったのかも忘れ、八雲さんは私の両親を微笑ましそうに見ていて、こちらもダメだと諦めた。
 
私はこのまま一体、どうなってしまうのだろう。婚姻届にサインをし、八雲さんと同棲することになるなんて、誰が想像できる?
 
それにあの父が、あんなに寛大だったとは。いつも私のすることにはいちいち口を出し、自分が敷いたレールの上を歩かせようとしたあの父がまさか結婚も同棲も許すなんて、仕事が絡むと人が変わるのは昔から変わらない。

いや。それだけ八雲さんのことを信頼している、そういうことなのだろうか。
 
どちらにせよ、私が危機的状況にあるのは変わらないわけで。これからどうするのかを考えることが最優先事項だ。
 
八雲さんとデートするだけでも大変だったのにほぼ一日一緒に過ごすなんて、私にそんなこと本当にできるはずがない。
 
一難去ってまた一難。私の苦悩は、まだまだ続きそうだ。





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