強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
八雲さんのことを信用していなわけじゃないけれど、副社長と言っても彼も男性なわけで。

抱きしめたりキスしてきたりするくらいだから、もしかしたら襲われる可能性も無きにしもあらず。とはいえ私はもう八雲さんに一度抱かれている身の上で、今更そこを強調するのもどうかと思うわけで……。
 
あぁ、もう。頭の中がぐちゃぐちゃで考えが追いつかない。やっぱり無理、いきなり八雲さんと同棲なんてできない。
 
信号が青になり車は走り出したというのに、手はまだ繋がれたまま。今はふたりだけで恋人のフリをする必要なんてないのに、八雲さんの考えていることもさっぱりわからない。

「八雲さん?」

「ん、何?」

「うちの両親が同棲していたからって、私たちもしないといけない理由がありません。やっぱりこんなこと、八雲さんに迷惑をかけるだけでよくないです」

うちの親の勝手な言い分に、八雲さんが付き合う必要はない。その思いを込めて八雲さんの横顔に話しかけたけれど、真っ直ぐ前を向いた八雲さんの表情から彼の心は読み取れない。


< 111 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop