強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
しばらく黙ったままだった彼が、小さき息を吐いてから口を開いた。

「迷惑じゃないって言ったら?」

「え?」

「同棲する理由があると言ったら、芳奈はどうする?」
 
真面目な顔をする八雲さんの口から放たれた言葉に、一瞬頭の中がフリーズする。何を言ってるのか理解するのに数十秒かかった。
 
迷惑じゃないというのは、一旦横に置いて。同棲する理由がある……は聞き捨てならない。

だってそうでしょ。母が言い出さなければ、今日から同棲なんて絶対になかった。それなのに八雲さんはなんで、同棲する理由があるなんて言うの? 

急に決まったことなのに、そんなのおかしいじゃない。

腑に落ちないことばかりで、八雲さんを睨みつける。でも運転中の八雲さんからは、なんの反応も帰ってこない。

「もうホント、冗談はやめてください。そんなに私をイジメて楽しいですか? からかうなら、他をあたってほしいです……」

急に悲しくなってきて、語尾がだんだん小さくなる。自分がどうしたいのか、わからなくなってしまった。


< 112 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop