強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
父の車の運転手にドアを開けてもらったことはあっても、こんなふうに手を差し伸ばされたことは一度もない。

八雲さんの手を取っていいものなのか躊躇していると、しびれを切らしたのか八雲さんが私の手首を乱暴に掴んだ。

「さっさと手を貸せ」

「キャッ!」

強い力で引っ張られ体制を崩した私の身体は、八雲さんの胸にドンと命中。そのまま彼の腕に抱きすくめられる。

「そんなに俺に抱かれたかったのか? 積極的だな」

「積極的なんて、私からやったみたいに言わないでください。誰のせいで、こうなったと思ってるんですか!」

「さあ、誰だろうな」
 
八雲さんは私を抱きしめたままククッと笑い出し、身体が小刻みに揺れ始める。何がそんなに面白いのか全く理解できない私は、勝手なことを言う八雲さんに頬を膨らませてみせた。

「もういいです。それより早く、部屋に案内してください」
 
いつ誰が来るかわからない駐車場で、いつまでもここで抱き合ってるのは恥ずかしい。


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