強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

「“お邪魔します”じゃない、“ただいま”だろう。今日からここが芳奈の家だ、間違えるな」

「そうですけど……」
　
いきなり“ただいま”はレベルが高すぎる。今日くらいはお客様気分でも、許してもらいたい。
　
ぶつぶつ文句をつぶやく私の手を、八雲さんが引っ張る。玄関からまっすぐに続く廊下を彼のあとを渋々ついていくと、突き当たりにあるドアを開いた。

そこは目を引くほどの大きなリビングで、ペントハウスだからか天井も高い。大きな窓の外はルーフバルコニーになっていて、マンションなのに庭付きのような開放的な空間が作り上げられている。
　
そして何より素晴らしいのは、その眺望。

四十八階から見下ろす夜景は絶景で、眼下にはるか遠くまで広がる夜景を独り占めしている気分。キラキラ輝く光は、まるで宝石を散りばめたようだ。
　
ここで暮せば、毎日この景色を見られる──ということか。