強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
こんなことを言うのもなんだけれど、さっきまでいた我が家も高級住宅街に建つ豪邸で。

四星百貨店の社長の本宅だけあって、豪華さやセレブ感には見慣れていたけれど。この風景だけは、どうやっても手に入れることができない。

「いいだろう、この夜景。でも本来の夜景はこんなもんじゃない。明日は朝から天気がいいらしいからな、これより何万倍もキレイな夜景を見せてやる」

感嘆の吐息を漏らし夜景に見入っていると、突然無防備だった背後から抱きしめられる。八雲さんは耳元でそう囁き、抱きしめる力を強めた。

「この辺りで一番高いマンションだからな。なんにも邪魔されず、夏の花火大会が楽しめる」

「は、はい……」

こんなとき、なんと答えるのが正解なのか。可愛く『楽しみです』なんて言えればいいのだけれど、私の中にそのノウハウはない。
 
彼女じゃないんだから、可愛くする必要もないけれど……って違う! そんなことより、今のこの状況の方が問題なわけで。


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