強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

まだ少しじんじんする首筋を押さえ、目を伏せる。これから同棲が始まるというのに、初日からこれでは身が保たない。

「芳奈がどう思おうと俺のものだから。そのつもりで覚悟しといて」
　
ゆっくりと八雲さんの顔が近づき、あと数センチまで迫ってくる。またキスされると瞬時に察知した私は、彼の口を手で思いっきり押さえた。

八雲さんが顔をしかめ、眉間にシワが寄る。

「わかったよ。今日のところはもう何もしない。それより、腹減っただろう。俺が作ってやるから、芳奈はその間に風呂に入れ」
　
今日のところはじゃなくて、もうずっとしないでもらいたい。
　
ふんとそっぽを向くと、同じタイミングでお腹の虫がギュルギュルと鳴き出す。聞かれた？と慌てて振り返ると……八雲さんが肩を震わせて笑っていた。
　
流石に今の轟音は、聞こえるよね……。

恥ずかしさを隠すようにすっくと立ち上がり、腕まくりをしてキッチンに向かう。