強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「偽ですが一応婚約者なので、材料があるなら夕飯は私が作ります。八雲さんの手を煩わすわけにはいきません」
 
それに、料理は嫌いじゃない。料理教室には通ったことはないけれど、母やお手伝いさんの見様見真似で一通りのものは作れる。

男子厨房に入らず──じゃないけれど、女の私がいるのに八雲さんに作らせて、ひとりぬくぬくとお風呂に入るわけにはいかない。

「芳奈の気持ちは嬉しいけど、今日のところは俺に作らせてよ。ひとり暮らしが長いからさ、結構うまいもん作るよ、俺」
 
自画自賛する八雲さんに、苦笑してみせる。

「でも……」

「ほら、さっさと風呂に入る。いうこと聞かないと、ここで身ぐるみ剥がして抱えてバスルームにつれてくけど、いい?」
 
身ぐるみ剥がしてって、それじゃあ私はすっぽんぽん!? そんなの、いいはずない。
 
大慌てでキャリーバッグから着替えなどの一式を揃え、教えてもらったバスルームへと急ぐ。脱衣所の大きな鏡の前に立ち、ほっと息をついた。


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