強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

「そうなんだよ。俺も初めて食べたとき、同じことを思った。それからは、ここの餃子以外食べてない」

「そうなんですね。でも、わかるかも」

「俺たち、味覚の相性も良さげだな」
　
八雲さんが私をじっと見つめ、意味深にニヤリと笑う。

味覚の相性も？　“も”って……。

他に何か相性が合うものがあっただろうか。頬杖をつき、ふむと考える。八雲さんとのあれやこれを辿っていると、ひとつ思い当たることにぶつかった。途端、顔が燃えるように熱くなる。

いやいや、それが正解なのか確証はない。だった私には、その記憶がないのだから……。

「芳奈、また顔が真っ赤。なんか、エロいことでも思い出してる顔だな。図星だろう？」

手を伸ばした八雲さんが、私の頬をやんわりと摘む。その口元には、意地の悪い笑みが浮かんでいる。

「し、知らないです！　そんなこと言っていると、テーブルの上のもの全部食べちゃいますからね！」

そのあとダイニングが賑やかな笑いで包まれたのは、言うまでもない。