強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「ちょっと、何するのよ!」
「なんかワケありって感じだけど、何があったのか俺に話してみない?」
いたずらっ子のような茶目っ気いっぱいの瞳で顔を覗き込まれ、急なことに思わずたじろぐ。
いきなり数センチまで顔が近づき、心臓が大きく跳ねた。慣れない状況に驚きすぎて、動くことすらできない。
それにしても、なんて綺麗な顔をしているの。綺麗なんて男性に使うのはどうかと思うけれど、それ以外に形容し難いからしょうがない。
奥二重の目は切れ長で、真っ直ぐな鼻梁は高貴な王子様を思わせる。顎のラインもシャープだし、芸能人顔負けのカッコよさだ。
……なんて、感心している場合じゃない。正気に戻り動くようになった腕を上げ、男性の体を押しのける。それを見ていた恒さんが、彼の肩に手を乗せた。
「おい、八雲。芳奈ちゃんはうちのお得意様だからな、ちょっかいを出すなよ」
恒さん、ナイス! やっぱり恒さんは紳士だわ。それに引き換え、この男は……。
軽蔑の目を向けるが、そんな私の視線を気に留めるどころか笑ってる?
「ちょっかい? マスター、それは人聞きが悪い。俺は彼女の悩みを聞いてあげようと思っただけ、下心があるわけじゃないよ」