強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

当たり前だ。下心なんて持たれてもこっちが困る。それよりも、この今にも唇が触れそうな息もできない顔と顔の距離をどうにかしてもらいたい。
 
少しのけぞり、不満げに唇を尖らせた。

「可愛い顔して、俺を誘ってるの?」

「はぁ!?」

ニヤリとほくそ笑む顔に、そんなわけあるか!と言い返したいのに、酔いが回ってきたのか急に頭の回転が鈍くなってしまう。

なんだか相手にしてるのが、面倒くさくなってきた。何でもかんでも上から目線で気に入らないけど、退屈しのぎにはちょうどいいかも。

どうせ見ず知らずの男だ。何を話したところで、ここでおさらばな関係。問題解決にはならないけれど、愚痴を聞くだけ聞いてもらって少しでも心の重荷を軽くしたい。

「恒さん。新しいのを一杯ちょうだい。あと、この人にも何か作ってあげて」
 
これは話を聞いてもらうお礼だと、横を向き視線を投げかける。私の視線に何かを感じたのか、男はふっと笑いわかったというように小さく頷いた。


< 16 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop