強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

アメとムチ


時刻は午後二時三十分。
 
タクシーを降りると、真夏の容赦ない日差しが照りつける。

「結構暑いな」
 
八雲さんは太陽の光を避けるよう手をかざし、横目でちらっと私のことを見る。目線が合ってしまい、肩を落とすと彼の方に向き直った。

「さっきはごめんなさい。少し言い過ぎました、反省してます」
 
頭を下げた私の肩に、大きな手が乗せられる。

「反省してます……か。別に謝ることはないんじゃないか? 芳奈は何も悪いことしてないんだし」

「でも……」

「そんなことより、今は仕事に集中したほうがいいと思うけど?」
 
確かに。いや、もちろん八雲さんへの謝罪も大事だけれど、まずは交渉に向けて気持ちを集中させるほうが先決だ。

「お客さん、結構並んでますね」

赤い屋根に白い壁。南欧風の可愛らしいまるで絵本に出てきそうな店の前には、十人ほどの人たちが列を作っている。













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