強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

「四星百貨店の社長の一人娘ってことは、お前ってお嬢様なんだ。へぇ……」
 
ことのあらましを話すと男は信じられないと言うような顔で、私の頭の天辺から足元までゆっくりと視線を落として品定めをし始めた。
 
どうせ、お嬢様にはほど遠いとでも思っているのだろう。

でも、あながち間違いじゃない。子供の頃は綺麗な服を買い与えられ、どこから見ても上品なお嬢様そのものだった。

でも今は自分の給料でやりくりしているから高い服は着ないし、外にいれば世間一般どこにでもいる普通の二十三歳の女だ。

「お嬢様なんて言わないで。それに、私はお前じゃありません。芳奈って名前が、ちゃんとあるんだから」

「はいはい、わかった。じゃあ芳奈、ひとつ聞く。さっき『嘘をついた』って言ってたけど、誰にどんな嘘をついたんだ?」

「人の話、盗み聞きしてたの? それに、いきなり呼び捨てって……」
 
友達はみんなそう呼ぶし、芳奈と呼ばれることが嫌なわけじゃない。でも男の人から呼ばれた経験がほとんどなくて、どう反応したらいいのか少々戸惑う。


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