強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
え? 嘘……。
 
そこで我に返り、八雲さんの胸に手を当て押しのける。でも私の力なんて些細なもので、すぐに手を取られ組み敷かれてしまう。

「芳奈の初めてが欲しい。芳奈は? 俺が欲しい?」
 
八雲さんの初めて聞くような艶を帯びた声に、ゾクッと身体が震える。初めての経験で……え? 初めて? 八雲さん今、私の初めてが欲しいって言ったよね? それってどういうこと?
 
頭の中に疑問符が群がり、八雲さんをまじまじと見上げる。

「やっと気づいたみたいだな。初めて会った日の夜、俺は芳奈を抱いてない」

「そ、そうなの? じゃあなんであんなことを……」
 
記憶のないうちに処女を失って、後悔してもしきれないくらい悩んだのに。まさかなんにもなかっただなんて……。
 
ホッとしたのも束の間、ジリジリと怒りがこみ上げてくる。

「嘘つくなんて、八雲さんヒドい!」


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