強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
なんとも腑に落ちない疑問に首を傾げる。でもその疑問は、耳元に顔を近づけた千登世先輩の次の言葉で、すぐに解決をみる。

「私の仕入れた情報によると、この業務提携には裏があって。うちの副社長が四星百貨店の社長の娘に近づいて、この話を優位に進めたらしいよ。なんかショックだよね。栗城副社長が、そんなことする人だったなんて」
 
千登世先輩の口から出た耳を塞ぎたくなるような言葉が、私の身体から一気に体温を奪う。寒さに耐えきれず自分で自分の身体を抱きしめると、私の異変に気づいた千登世先輩が慌てた様子で顔を覗き込んだ。

「芳奈、どうしたの? 急に顔色が悪くなってるけど、どこか調子がおかしい?」
 
心配する千登世先輩に大丈夫と言いたいのに、ブルブル身体が震えて口を動かそうにもどうにもままならない。次第に意識が薄れてきて、椅子から滑り落ちそうになる。

「芳奈!」
 
咄嗟に腕を伸ばし私の身体を支えた千登世先輩のおかげで床に落ちることはなかったけれど、身体に全く力が入らず自分では立ち上がることができない。


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