強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

部長の優しさをしみじみ感じ、千登世先輩と一緒に企画部のフロアを後にする。エレベーターに乗り込み一階に向かう途中、さっきとは違う胸のむかつきに口元を押さえた。

「気持ち悪い……」

「芳奈、マジで大丈夫？　もう一階につくから、すぐトイレに行くよ」
　
エレベーターが一階に到着すると、千登世先輩に抱えられながらトイレに向かう。洗面台に手をついて吐き気と戦うものの、それは一向に収まりを見せず。かと言って何も吐き出すこともできず苦しんでいると、千登世先輩が容易には信じがたい一言を放った。

「芳奈。あんたもしかして、妊娠してるんじゃない？」

「え？」
　
ゆっくり顔を上げ、鏡に映る自分の顔を見る。そこには血色の悪い、なんとも情けない顔をした自分が映っている。
　
まさか私が妊娠……。
　
でも千登世先輩にそう言われて、はたとあることに気づく。

そう言えば、もう三ヶ月近く生理が来ていない。今まで寸分も狂うことなく来ていた月のものが、三ヶ月も来ていないなんて、どう考えたっておかしい。