強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「お母さん。八雲さんから連絡が来ても、私はここにはいないって言っておいて。お願い」

「でも……。それでホントに、いいの?」

「うん」
 
そう笑って答えると、母も諦めたのか「わかったわ」と納得。千登世先輩を連れて二階に上がり、まだそのままになっている自分の部屋に入った。懐かしい匂いに、少しだけ心が安らぐ。

「芳奈。さっきからあんたが言ってる八雲って、もしかしなくてもうちの副社長のことだよね? 付き合ってるの?」

「やっぱりわかっちゃいますよね。はい、そうです。ちょっとワケアリで、一緒に暮らしてます。いや、もう暮らしてましたかな」
 
過去形で答え、自分が思っている以上にショックを受けていることを知る。一度止まった涙が溢れ出し、今度は止めることが難しそうだ。
 
それでも千登世先輩には全部話さなければと、言葉をひとつひとつ紡ぎ話し始めた。黙って聞いていた千登世先輩は、最後に大きく息を吐く。


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