強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「う、うう、嘘、でしょ……」
私が甘えて駄々をこねた? そんなこと、あるわけない。それにこんないい加減なことをする人の言葉なんて、信じられるわけがないでしょ!
だってそうじゃない。恒さんの店で飲みすぎて意識をなくしてからの記憶が、私にはこれっぽっちも残ってないのだ。それなのにあーだこーだ言われて、『はいそうですか』なんて納得する人がいると思う? 私だって、あんたの話を鵜呑みにするほどバカじゃないんだから!
「嘘つき」
我ながら、幼稚な反論の仕方に呆れる。けれど他に言葉が見つからない。
それに下着姿のまま男性の腕に抱かれていては説得力がないことに気づき、その後の言葉が続かない。
ダメだ。はじめての状況に頭の中が混乱して、どうしていいのかわからない。いくら酔っていたとは言え、自分がこんな破廉恥なことをする女だったとは……。
古風だと言われるかもしれないが、男の人と一線を越えるのは結婚してからと思っていた。生涯たったひとりの人だけに、この身を捧げる──そう思っていたのに。
悔しくて呆れて悲しくて、涙がホロリと溢れ出る。