強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「付き合うとかどうとか、もうそんな次元の話じゃないの。相手は副社長だよ? 私みたいな下っ端の社員が、会えるような人じゃないんだから」
いくら親が四星百貨店の社長でも、勤める会社ではただの従業員のひとり。役職もなにもない一般社員の私には、副社長は遠い存在の人だ。
「でも今、会ってるじゃないか」
「はあ? 何言ってるの? 意味わかんないんだけど」
もうホント、ふざけるのも大概にしてほしい。こんなところでこの人と、無駄な時間を潰してる暇はない。
もう一度、ベッドから抜け出そうと試みる。でもやっぱり失敗に終わり、逆に強く抱きしめられてしまって、仕方なく身体の力を抜いた。
「もう、なんなのよ」
「逃げようとする、お前が悪い。なあ、いいこと教えてやる。俺の名前、知りたくないか?」
「名前?」
そう言えば私は名乗ったのに、この人の名前は聞いてなかった。きっともう会うこともないのだから、今更聞く必要もない。
でも自分だけ知られているなんて癪に障るから、一応聞いておこう。