強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「そんなに名乗りたいのなら、聞いてあげてもいいけど?」
なんて、ちょっと上から目線で言ってみたりして。
「なんだよ、その偉そうな言い方は。聞いて後悔するなよ。俺の名前は栗城八雲。どこかで聞いたことないか?」
「栗城八雲……」
確かに、どこかで聞いたことがあるような……。
芸能人? 作家? それともスポーツ選手? あれこれと考えてみるが、なかなか思い出せない。
「そう、いい名前じゃない。で?」
なんて。またもや上から目線そう答えると、八雲と名乗った男性は呆れたように息を吐いた。
「で?って。芳奈お前、自分が働く会社の副社長の名前も知らないのか?」
「し、失礼ね。それくらい知ってるわよ。いい? 社長が栗城大雅で、副社長は栗城八雲……栗城、八雲?」
ま、まさかね。同姓同名、その両方が一致するのはかなりの低確率だけど、世の中にひとりもいないわけじゃない。
たまたま偶然同じ名前の人がB&Rに飲みに来て、これまた偶然声をかけてきただけ。