強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
違う、絶対に違う! この人は副社長と同姓同名の他人。副社長だなんてあるわけない。そう思うのに、身体が小刻みに震えだす。
「はい、これ」
そう言って手渡されたのは、クリキホールディングスの会社案内パンフレット。
「三ページ目を見てみろ」
言われるままに表紙を開き、一枚めくる。二ページ目の左側には顔写真付きで社長の紹介が、三ページ目の右側には……こちらもご丁寧に顔写真付きで副社長の紹介がされている。
栗城八雲、三十三歳──。
目の前にいる男性と、パンフレットに載っている顔写真の男性を交互に見比べる。
何度見直しても間違いない、同姓同名の同じ人物、クリキホールディングスの副社長だ。
絶対的な証拠を挙げられて、自分の運の悪さに感嘆の吐息をもらす。
とんでもないことをしでかしてしまった……と嘆いても後の祭り、居ても立ってもいられない。
さっきまでにっちもさっちもいかなかった男性の腕の中から、嘘みたいにスルリと抜け出す。
まさに火事場の馬鹿力。掛け布団を引っ張り身体を覆い隠すと、深く頭を下げた。