強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「捕獲。何、俺から逃げ出せるとでも思った?」
言っていることは俺様発言なのに、ひどく甘い口調に脳が混乱する。
組み敷かれ妖艶な瞳に見下されると、身体の力が抜けてしまう。こんなことをして、副社長はどういうつもりなのか。今現在、自分が置かれている状況がうまく飲み込めない。
副社長は女性の扱いに慣れていて、こんなシーン珍しくもないと思うけれど、私にとっては何もかもが初体験。
ちょっとした暇つぶしで遊んでいるだけなら、一刻も早く開放してほしい。
そう思うと、考えるよりも先に口が動き出す。
「副社長、からかうのもいい加減にしてください。付き合うことになったとか勝手なことを仰っていますが、世の中には言っていい冗談と悪い冗談があります」
「そうだな」
「そうだなって……」
副社長の余裕綽々と言わんばかりの笑顔に、呆れて目を伏せる。
この人は私の話を、ちゃんと理解してるのだろうか。
私と副社長が付き合うなんて、そんなことできるわけない、どうかしてる。百歩譲って恋人のフリだけだとしても、ありがた迷惑としか言いようがない。