強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
仮にこれが、四星百貨店の社長の一人娘とクリキホールディングスの御曹司のとの、明るい未来への前向きな結婚、あるいは政略結婚なら話はわかる。
けれど今副社長が言っているのは、そういったたぐいのものではない。私がついたくだらない嘘に、副社長が付き合う必要はまったくないのだから。
「ホントにもう、勘弁してください。副社長の手を、わずらわすわけにはいきません」
「そう言われてもなぁ。俺、芳奈と一晩過ごしちゃったし、大人として責任取らないといけないからなぁ」
右の口角を上げてニヤリとほくそ笑む顔がグイッと近づく。さあどうする?と、彼の目がそう語っている。
そうか。私は昨晩、副社長に抱かれたんだっけ。
その事実を知る記憶は何ひとつ残ってないけれど、状況が状況なだけに納得するしかない。
でもだからといって、じゃあ責任とってくださいと言うには、私たちの関係はあまりにも曖昧だ。
「副社長に私の初めてを奪われた件なら大丈夫です。絶対に訴えたりしませんから、安心してください」