強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
とんだ、口からでまかせ。今言ったことは本心ではないし、もちろん本望なはずもない。
しかも記憶がないなんて、お恥ずかしい限りである。相手は我が社の副社長、本当に訴えることもできないし、ああ言うしか他にいい言葉が浮かんでこないのだからやむを得ない。
副社長を見上げれば、クククッと声を押し殺し、肩を小刻みに震わせて笑っているから驚くばかり。一体この状況のどこが、そんなに面白いというのだろうか。
「ふ、副社長?」
不思議に思い、問いかける。
「ああ、悪い。芳奈が『絶対に訴えたりしませんから』とか言うからさ。しかも俺に処女を奪われて大丈夫とか、ホントに夜の記憶がないんだな」
無いから困ってるんじゃないっ!
なんて、副社長に言えるわけもなく。無駄な口をたたかないようグッとこらえると、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「とにかくです。二十三にもなって恥ずかしいんですけど、なんの連絡もせず無断外泊したので両親も心配していると思うんです。だからそろそろ……」