強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「そうだな。じゃあ芳奈を送るついでに、ご両親に挨拶するか」
「は、はあ!? 挨拶って……」
副社長、何言ってるの?
私を送るって。いやいや、子供じゃあるまいし、送ってもらわなくてもひとりで帰れます。って言うか、逆に送ってほしくないんですけど!
両親に挨拶する? なんで副社長が私の両親に挨拶するわけ? 本当の彼氏でもないのにあの父に会ってしまったら、その後どうなるかわかって言ってる?
でも副社長は送る気満々な様子で。私の身体の拘束を簡単に解くと、ウォークインクローゼットの中へ消えていってしまった。
身体は軽くなったけれど、気持ちはズンと重たい。
もうホント、頭が痛い。副社長には何を言っても無駄なような気がしてきた。
理解しがたい発言に、返す言葉も見つからない。副社長の呆れるばかりの言動に、なんだかもう何もかもがどうでもよくなってきてしまう。
もうこうなったら副社長の言う通り、付き合うことにしちゃう?
だってそうでしょ。その話に乗っかれば一石二鳥、彼氏もできるし父のこともうまく誤魔化せる。本意ではないけれど今さえ上手く乗り切れば、その後のことはまたその都度考えればいいだけの話。