強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「父親と違って母親なんて、どこもそんなもんじゃないのか? ということは、今日は挨拶できそうもないね」

「そうですね。すみません、送ってもらうだけになって」

「いいよ。挨拶なんて、いつでもできるし。また会う機会を作ってくれればそれでいい。でも、なるべく早いうちに……な?」
 
赤信号で車を止めた八雲さんが、私の頭に手を置きポンポンと撫でた。その仕草がくすぐったくて首をすくめると、それを見た八雲さんが意味深に笑う。

「頭を触ったくらいでこんな反応とか、昨日の夜とは別人だな。可愛すぎてハマる」

「はぁ? 可愛すぎてハマるとか、なんですか? それに昨日のことは、もう忘れて……」
 
自分がどんな様だったのか覚えていないことを言われても、ただただ恥ずかしいだけ。酔って記憶がないなんて、どれだけ飲んだのよ私……。
 
前髪をくしゃくしゃと掻き乱し、ため息と共に項垂れる。

「忘れて? 忘れるはずないでしょ、あんな面白いこと」

「……面白い」


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