強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

酔った勢いで一夜の過ちを犯してしまったあの日から、今日で十日。
　
『また会う機会を作ってくれればそれでいい。でも、なるべく早いうちに……』なんて言われたのに、彼にまだ連絡をしていないどころか父にも八雲さんの話をしていない。
　
彼と交換したスマホの番号を見つめては、ため息をつく毎日。心のどこかで、八雲さんとの話がうやむやになってしまえばいいのに……そう思う自分がいた。どうしてそう思うのか、それはよくわからない。
　
八雲さんに嘘の恋人を演じてもらうなんて申し訳ないとか、もっと他にいい方法があるんじゃないかとか、思うところは色々あるけれど。実際どの気持ちが本当なのか、考えれば考えるほどわからなくなってしまい、結局前に進めないでいる。

『目、閉じるのを忘れたから、もう一回いい……ですか？』

なんて。あのときの私は、どうかしていた。ファーストキスのやり直しなんて、どうしてあんなこと言ったのか。

そっと唇に触れれば、八雲さんの柔らかい唇の感触を思い出して……ってダメでしょ！　今は仕事の最中、余計なことは考えない。