強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
そりゃあ直接会ったことはあるけれど、そのことは言えない。部長になんて、絶対に言えるはずがない……。

「い、いいえ、ありませんが」
 
動揺丸見え。でもなんとか、部長にはバレていないようで。

「だよなぁ。俺にもなんで梅岡が呼ばれたのかわからんのだが」

「はぁ? 私が副社長に呼ばれてるんですか?」

「そう秘書から連絡が来た。仕事についての打ち合わせがどうだとか」
 
副社長と仕事の打ち合わせなんてあるわけない。あるとすれば、ただひとつ。
 
父親に会わせる──そのことに決まってる。

「今すぐにとのことだが、有坂行けるか?」
 
行けるかと聞かれれば、行けないこともない。特にすぐやらなきゃいけない案件もないし、誰かに頼まれてる仕事もない。

でも私個人の気持ちとしては、会社で副社長となんて会いたくない。できることなら『行けません』と断りたいところだけど。
 
ここで断ればどうなるのか……。
 
安易に予測できてしまうから、恐ろしくてそんなことできなくて。


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