強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
クリキホールディングスは、副都心の一等地に十階建ての本社棟とその横に研究棟を連ねている。その周りには工場がいくつか並び、この辺り一帯はクリキホールディングスとその関連会社で占めている。

私が働いている商品企画部は本社棟の四階、副社長を始め重役たちの部屋があるのは最上階の十階。めったにどころかまだ一度も足を踏み入れたことのない場所に行くというのは、こうも恐ろしいことなのか……。

緊張しすぎて喉はカラッカラだし、手の震えは止まらない。

「やっぱり断ればよかった……」
 
呟いたのと同時にエレベーターが、「十階です」と到着したのを教えてくれた。
 
最近のエレベーターは性能が良くて、あっという間に到着してしまうのね。
 
はぁ……と嘆息を漏らし、恐る恐る十階のフロアに足を踏み入れた。そのまま真っ直ぐ進み、一度受付に立ち寄る。
 
もちろん一階に通常の受付はあるが、セキュリティ強化のために最上階のフロアにも専用の受付がある。


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