強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

「すみません。商品企画部の梅岡ですが、副社長に呼ばれまして……」

歳は私より少し上か、綺麗どころの受付嬢の女性が『なんであんたみたいなチンケな女が副社長に呼ばれるのよ』と言わんばかりの不躾な視線を向ける。頭の先から全身をなめるように見られ、居心地が悪い思いに下唇を噛む。

「確認します」
　
間違いだとでも言いたいのか、その口調は冷たくて。私だって好きでここに来たわけじゃないんだけどね──と言いたいのをぐっと堪える。

「副社長、受付に商品企画部の梅岡さんが見えていますが……はい、わかりました。お通しいたします」
　
八雲さんの返事が気に入らなかったのか、はたまた私が気に入らないのか。受話器を置いた受付嬢の女性が、私のことを疑いの眼差しで睨みつけた。ここで睨み返しては大人げないと、涼し気な笑顔を返す。

「その角を曲がって、ふたつ目のドアが副社長の部屋。さっさと行きなさいよ」
　
受付嬢あるまじき態度に驚きながらも、触らぬ神に祟りなしとすぐにその場を離れる。