強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

「な、なんですか!?」

「なんですかって、それはこっちのセリフ。ねえ、なんで連絡してこないの？　仮にも俺は芳奈の恋人でしょ？　十日は待たせすぎじゃない？」

「それは……」
　
私だってわかっている。確かに十日も待たされたらイライラも限界、呼び出されても仕方がない。でも反対に、忘れてくれたらいいと思ったのも本当で……。
　
ゆっくり視線を上げ、八雲さんを見つめる。弧を描く甘い瞳が、自信ありげに私を見つめ返した。

「約束を守らない悪い子には、罰を与えないといけないよな？　どんな罰がいい？　痛いの、それとも苦しいの？」

そう言いながら近づいてくる八雲さんの身体に押さえつけられ、身動きが取れなくなる。顔もわずか数センチまで迫ってきていて、少し動けば唇が触れてしまいそうだ。

このまま黙っていても埒が明かない。どうする？　痛いのも苦しいのも、できればどちらも遠慮したい。

「……ご、ごめんなさい」
　
目そらしうつむき加減で、正直な気持ちを言葉に表す。この場合はどうしたって私が悪い、謝るのが先決だ。