強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
よし。このままお見合いはなかったことに──そう思って胸をなでおろしかけた、その時。
「クリキホールディングスの役員でまだ結婚してないのは確か……副社長くらいなものだろう。芳奈、お前まさか副社長と付き合っているのか?」
え、そうなの? 全然知らないんですけど。
思ってもみなかった方向へ話がそれてしまい、考えが追いつかない。
「え、えっと、それは……」
どうして急に、うちの副社長が出てくるのよ。そうなると、話がややこしくなるじゃない!
「お、お父さん、ちょっと……」
「芳奈、でかした! それなら話が早い。今回の見合いの話は、なかったことにする」
父は満足げにそう言うと私の話も聞かず、高笑いしながら控室から出ていってしまった。
ど、どうしよう。軽い気持ちでついた嘘が、なんだか想像もつかない方向へ進みそうな予感がするんだけど……。
いまさらしても遅い後悔をすると、頭を抱えてソファへと倒れ込んだ。