強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
婚姻届と梅雨
八雲さん到着まで、あと十分。
彼のことを待ちながらソワソワと落ち着きなく、リビングと玄関を行ったり来たり繰り返す。
今日の服装は、昨日とはうって変わって清楚なワンピース。その胸元には、八雲さんからもらったネックレスが光り輝いている。
そう言えば私、お礼を言ってないような……。
八雲さんの顔を見たら、真っ先にありがとうを伝えよう。
今日は昨日の天気が嘘みたいな梅雨空。朝から止む気配を見せない雨に、いつもなら気分も滅入るというもの。でも今日の私の心は、朝からすこぶる調子がいい。
もちろん不安がないわけじゃない。私はちゃんと八雲さんの恋人役を演じることができるのか、今日という日を無事に乗り越えられるのか。
考えれば考えるほど不安は増していくというのに、何故か八雲さんの顔が浮かぶとスッと解消されるから驚くしかない。
八雲さんは言っていた、『明日は俺が頑張るよ』と。彼に全部を任せるつもりはないけれど、その言葉はやっぱり心強い。