どんなきみもだいすき


 『高野先生…笑わせないでくれますか?』

 …母さんから笑顔が消えた。


 『死ぬわけじゃない? 何も知らないのに、大きな口…叩かないで下さい』

 高野先生は、顔が引き攣って強張っている…。

 よっぽど母さんが怖いんだろう…。


 『わたしは…高野先生より、とても若いです。早くに今の旦那の隆司さんと結婚して、子供も授かりました』

 『…嬉しかった。子供ができた時、初めてわたしは…自分の手で体で守らなくちゃいけないと思いました』

 母さんは…優しい笑顔で目を閉じて言った。


 『奏多は、すくすくといい子に育ってくれました。隆司さんに似て…優しくて家族思いな強い子に。おとなしい性格は…きっと、わたしに似たんだと思います』

 横目で奏多を見つめて、母さんは微笑んで言った。
< 150 / 218 >

この作品をシェア

pagetop