【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
その真意がわからずに、私はひたすら葉月くんを見つめる。
もしかしたら葉月くんは、過去の私を慰めようとしてくれてるのか、と都合のいいことを思ったけれど。
「さっきの写真、小学生ん時の羽澤だよね?」
それはさっき、玄関で私がふらついた拍子に倒れた写真のことを言っていた。
うんと頷けば、その写真を思い出したのか、葉月くんの口から小さく笑みが零れる。
「どっからどう見ても、俺は可愛いと思うんだけど」
「……な、なに言ってるの葉月くん」
「なにって、本音」
「……っ、」
この前みたいに誤魔化す素振りも見せない葉月くんから、私は今度こそ耐えきれずに目を逸らした。
……だけど。
こんな風に真っ直ぐ私の目を見て言ってくれた男の子は、初めてだった。
小さい頃の写真を見る度に、笑顔を向けているその顔が泣いているような気がして。
本当はずっと、思い出して傷つくのが怖いから、心の奥底に追いやって蓋をしてきた。
それが、葉月くんの言葉で泥ついた心が軽くなる。
葉月くんは、やっぱり私よりもズルい……。
もう十分なのに、葉月くんはさらに私の鼓動を加速させる。