【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
「───でも、あんな推理じゃ探偵にはなれないんじゃない?」
不意に向けられたその声は、まるでからかうような口調で、どこか笑みが混ざっていた。
「へ?」
葉月くんがゆっくりと日誌から顔を上げる。
推理? 探偵?
葉月くん、今そう言った……?
私は葉月くんから目が離せなくなる。
だって、あの葉月くんが顔を上げている。
毎日、ずっと猫背だった背中が今は伸びている。
そして……。
「俺は、“イケメンすぎるが故に女子からモテすぎて困ってる”わけでもないし、“人気雑誌non・nonのモデル”でもないよ?」
「……っ、」
クスッと笑った葉月くんのメガネの奥の瞳が、しっかりと私を捉えた気がした。
葉月、くん……?
私の鼓動がどくんと揺れて、たちまち早鐘を打ち付ける。
お昼休みの咲希ちゃんとの会話を、葉月くんが繰り返して言うから。
あの葉月くんが、こんなにスラスラ喋っているから。