【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


* * *


そして、調査だと強く宣言した次の日の放課後。


あれだけ威勢よく宣言したくせに、朝からずっと落ち着かなくてそわそわしていた。


待ち合わせは放課後になったら正門前、と昨日、資料室で決めていたのだ。



秋空の下、がやがやと開放的な放課後は、帰りの生徒達のお喋り声で騒がしい。



「葉月くーん!」



いつ見ても、猫背の葉月くんはすぐに見つけられる。



「お待たせ……しましたっ」



正門前で佇む葉月くんに弾む息を整えながら声をかけると、私に気づいた葉月くんがなぜか、ぷっ……と小さく吹き出した。



「……な、なに?」


「そんなに走ってこなくても、全然待ってないよ?」



不意に顔を上げた葉月くん。


長い前髪とメガネで隠れた目元が露になる。


その瞳が緩んでいて、いつもより距離が近いせいかとても鮮明に映る。


ドキリ、と一際大きく揺れる鼓動に、自分でも驚いた。


な、な、なに……このホントにデートの待ち合わせみたいな感じのやり取りは……。

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