【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡


映画館の中は平日ということもあってか空いている。


一番後ろの中央のシートに葉月くんと座り、上映が始まった。


誰も住んでいない古い団地が舞台のホラー映画。


誰かに見られているような感覚に怯え、“ソレ”が見えてしまう度に徐々に精神を削られていく主人公……。


うん、なかなかぞっとする展開だ……。



「怖い?」



暗がりの中、葉月くんがコソッと声を潜めて問いかけてくる。


私はぶんぶん首を横に振って、しっかり否定する。


まだ全然大丈夫!



けど、中盤に差し掛かるとそんなことを言っている余裕は欠片もなかった。



や、や、やばいかもしれない……。


さすが“この恐怖は、二度と止まらない”と、うたっているだけある!



「っ、」



何が怖いって、ストーリーももちろんなんだけど、不気味な顔がいきなり出てくる演出と音に、予想していても何度も声をあげそうになる。


葉月くんはシートの肘置きに頬杖をついて、余裕綽々だ……。

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