【完】葉月くんの素顔は甘くてズルい♡
“ 後藤 ”。
目付きの悪い体格のいいその男を見るのは初めてだったけど、名前は羽澤から聞いていたから覚えてる。
「お前、雰囲気変わった!?つーか、こんなに可愛い顔だったか!?」
「……」
「俺ら全員同じ高校なんだよ。んで、これからカラオケ行くんだけど、羽澤も来いよ!」
よくもまぁ、何事もなかった顔ですまして話しかけられるもんだな。
あれはすましてるって言うよりも、完全に忘れてんだろうけど。
自分が、羽澤にどんな言葉を振りかざしたかなんて。
「……私、あの」
羽澤の記憶には消したくても消せないお前の言葉が残り続けていて。
現に、先程まで握っていた羽澤の指先が、まるで温度を失くしたように震えてるのがわかる。
「なぁ羽澤も来いよ?久しぶりなんだから、いいだろ?帰りは俺が送ってってやるから」
後藤が明らかに引き攣っている羽澤の腕を無遠慮に掴む。
いつからこんなに、俺は気が短くなったのかと思う。
たとえ彼氏じゃなくたって、もう見てらんない。
「離してくれる?」
今度はプールの時みたいに無意識じゃなくて。
明確な意思だったと思う。